『徳川日本の個性を考える』刊行のお知らせ

ピーター・ノスコ『徳川日本の個性を考える』が東京堂出版より拙訳で刊行されます。原著 Individuality in Early Modern Japan: Thinking for Oneself (Routledge) の刊行からさほど間を置かずにお届けできることになりました。

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本書は以前に刊行された『江戸のなかの日本、日本のなかの江戸』(柏書房、2016)の副読本、あるいは姉妹編として構想されたものですが、いざ上梓されてみれば、幅広い切り口から近世の日本社会における個性の発露と、江戸に生きた「普通」の人々の価値観を論ずる、独自性を帯びた興味深い一冊となりました。目次は以下の通りです。

 

日本語版のためのまえがき 

第1章 序論 ―「我を思う」ための文脈づくり 

第2章 アイデンティティと志向性 

第3章 自己利益、反抗、公共圏 

第4章 信仰と宗教実践における秘密とプライバシー 

第5章 修身、サロン文化、私塾 

第6章 福利と幸福の追求

第7章 価値観     

第8章 結論 ―近世日本の個性 

あとがき ―現代日本における個性への反発

謝辞/参考文献/人名索引/事項索引

 

本書のキーワードともなっている「我を思う」とは、言うまでもなくルネ・デカルトの有名な命題「我思う、故に我あり」に由来するもです。西洋的な知の弁証法の代表各とも言えるようなこの命題はしかし、果たして日本とは無関係なのでしょうか。日本では個性の現前は最小限にとどまっており、集団の利益はつねに個人の利益に優先する……とは、意外にも近代以降に強化された言説に過ぎないのではないか。そのような疑問を出発点に、百姓一揆や日蓮宗不受不施派への迫害、さらには江戸の人々にとって「幸福」とは何であったのかというような抽象的な問題についても取り上げながら、国学者や儒者のみならず、戯作者や只野真葛など市井の人々の証言をも手がかりに、徳川社会の思想の構造を見つめます。

なおたっぷり一章分の長さのある「あとがき」では、現代日本の個性や価値観は近世と比較してどのような状況にあるのか、という実験的とも言える考察が展開されます。あくまで近世を研究する思想史家として、著者はこれまで現代日本について論ずることはありませんでした。その意味で本書は、半世紀にわたって日本について考え続けてきた歴史家からの、日本人へのメッセージでもあります。言論や表現の自由が国民の無関心のなかで徐々に奪われ、監視社会の到来さえ冗談ごとでは済まされなくなっている昨今、本書をきっかけとして日本社会のあり方についてご一考いただければ幸いです。

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