『日記文化から近代日本を問う』刊行のお知らせ

田中祐介(編)『日記文化から近代日本を問う ─人々はいかに書き、書かされ、書き遺してきたか』が笠間書院より発売となります。

本書は「近代日本における日記とは何か」という大きな問いについて、編者の田中氏が2014年から2016年にかけて「近代日本の日記文化と自己表象」と銘打って主催してきた研究会と、その総決算としての同名のシンポジウム(2016年9月)の成果を形にしたものです。異なる専門分野から集まった、若手を中心とする多くの研究者が、それぞれの視点から論考を執筆しています。

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本書の構成は以下のとおりです。拙稿は第七章。

 

総論 研究視座としての「日記文化」─史料・モノ・行為の三点を軸として(田中祐介)

第Ⅰ部 自己を綴ることの制度化

  • 1章 教育手段としての日記が定着するまで─明治期少年の『日誌』にみる指導と規範(柿本真代)

  • 2章 農民日記を綴るということ─近代農村における日記行為の表象をめぐって(河内聡子)

第Ⅱ部 史料としての可能性

  • 3章 昭和初期の役人日記における読書と政治的志向─マルクス主義と共産主義運動の間の二重の分断線(新藤雄介)

  • 4章 精神科診療録を用いた歴史研究の可能性と課題─戦時下の陸軍病院・傷痍軍人療養所における日誌の分析を中心に(中村江里)

  • 5章 多声響く〈内面の日記〉─戦時下の第二高等学校『忠愛寮日誌』にみるキリスト教主義学生の信仰・煩悶・炎上的論争(田中祐介)

第Ⅲ部 真実と虚構

  • 6章 昭和一〇年代の王朝日記受容と綴り方運動─堀辰雄・坂口安吾・川端康成における〈女性的なるもの〉のリアリティ(川勝麻里)

  • 7章 権力と向き合う日記─北條民雄と読者・文壇・検閲(大野ロベルト)

  • 8章 「編集された日記」における学徒兵の読書行為─学徒兵遺稿集と阿川弘之『雲の墓標』をめぐって(中野綾子)

  • 9章 ジュニア向け文庫の「非行少女の日記」─性をめぐる教化・窃視・告白(康潤伊)

第Ⅳ部 学校文化の中の「書くこと」

  • 10章 大正期の教育実習日誌におけるまなざしの往還─師範学校生徒はいかにして教員となったか(堤ひろゆき)

  • 11章 書記行為から〈女学生〉イメージを再考する─白河高等補習女学校生の日記帳と佐野高等実践女学校校友会誌を題材に(徳山倫子)

  • 12章 表現空間としての奈良女子高等師範学校─「婦徳」の内面化と詠歌の相関(磯部敦)

第Ⅴ部 「外地」で綴られた日本語の日記

  • 13章 戦前期満洲における中国人青年の学校生活─南満中学堂生の『学生日記』(一九三六年)から(高媛)

  • 14章 植民地台湾の知識人が綴った日記─黄旺成日記にみる読み書きの実践と言語選択(大岡響子)

第Ⅵ部 近代日本の日記文化を浮き彫りにし、相対化するために

  • 15章 近代日本の日記と学際研究─日欧比較という視座から(宮田奈奈)

  • 16章 近現代タイの日記文化─国民教導としての読ませる日記から民主化の黎明へ(西田昌之)

  • 17章 前近代の日記の〈発生〉について─日欧比較文化史の視点から(松薗斉)

第Ⅶ部 特別対談

  • 「個人の記録を社会の遺産に」(島利栄子「女性の日記から学ぶ会」代表)

シンポジウム開催記録

執筆者プロフィール(執筆者の日記習慣アンケート付き)

あとがき

 

なお、研究会は現在も進行中です。最新情報はウェブサイトをご覧ください。

日記は日本人にとってきわめて身近なものと言われ、また日記文学や、いわば小説化された日記である私小説など、日本的とされる文学の形態とも深い関係があるように思われます。今回は「近代」に重点が置かれていますが、日記なるものにはさらなる研究の余地がいくらもあるということが、本書によってなおさら明らかになるのではないでしょうか。

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