La. Lit への寄稿のお知らせ

八月末にネパールの Safu より刊行された英文の文芸誌 La. Lit に、書き下ろしの詩と、それを素材に翻訳について論じた文章を組み合わせた “Phobophobia, and some notes” を寄稿しました。日本からも Kindle 版を簡単に入手することができます。

拙文の他には Samrat Upadhyay の小説、Stuart McCarthy の詩、ロンドン大学SOAS教授 Michael Hutt へのインタビューなどが掲載されています。

今回で第三号を数える La. Lit は、「書くことの美を祝福する」という単純明快な使命の下、「世界の現代文学の成果をネパールに運び込み、同時に、ネパールおよび南アジアの文学を世界と共有する」ことを目的としています。Lalit はサンスクリット語で「美」を意味し、あるいは La lit と書けば、ロマンス言語の「文学」に近づきます。

編集長は Rabi Thapa 氏。英語で執筆するネパールの若手作家で、2011年にはPenguin から短編集 Nothing to Declare を上梓しています。

Thapa 氏がまさにそうであるように、ネパールの若い世代、それも深刻な貧困に加えて、複雑な政治情勢や、入り乱れる言語・民族・カーストという様々な課題を抱えるこの国でかなり恵まれた環境に生まれ育った若者たちは、ネパール語にある種の郷愁を覚えながらも、英語を母語として生活しています。

ネパールにはまだ伝統的な言語で執筆を続ける作家たちもいますが、良くも悪くも急速に西洋化が進んでいるネパールの今後を担うのは、間違いなく若い英語作家たちでしょう。彼らは大学時代の留学などをきっかけにいよいよ外から母国を見つめるようになり、そこから滲み出す情感を、母語である「外国語」で記すのです。

また、編集陣の一人である Pranab Man Singh 氏は、首都カトマンズにさえまだ多くない書店の一つ、Quixote’s Cove(キホーテのほら穴)の店主でもあります。この空間は書店であると共に図書館であり、英語で書かれた書物の普及と、若い作家たちの発信・交流を支援するサロンのような機能を併せ持っています。

La. Lit の背景にあるのも、文学を共通言語とするこのような国際交流に他なりません。雑誌のほか、オンライン版も公開されています。新世代の作家たちによる同人活動というと、日本でもそれが大正から昭和にかけて大きな意味を持っていたことが思い出されますが、ネパールでもまさにいま、そのような胎動がうねりだしつつあるようです。