「川は流れない」発表のお知らせ

先日、「川は流れない」と題した詩を web 雑誌 shishi に発表しました。

web 雑誌ということで、どなたでも無料でブラウザ上から読む事ができます。このような媒体では縦書きも可能ですが、やはり横書きに適している印象があったため、今回は「横書きで日本語の詩を書くこと」が一つのテーマになっています。もちろん僕の手になるのは本文だけで、デザインは編集部にお任せしました。

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さて、ここで昨年始動したばかりのこの新しい雑誌についてもご紹介しておきましょう。

2010年は電子書籍元年と銘打たれていましたし、実際、様々な方法で無数の電子書籍を楽しむことが可能にはなりました。ある程度の年齢の作家たちのあいだでは、「いまの若い人は基本的に電子書籍を読んでいる」という勘違い(!)も横行しているようです。しかし実際のところ、電子書籍は新しい選択肢ではあれ、それが私たちの日常に定着しているとはまだまだ言えない状況です。

これにはいくつもの原因があるでしょう。まず、読書という行為に思い入れのある人ほど、紙の本に対する愛着が強い傾向にあること。次いで、一部の新興出版社が積極的に電子書籍を展開しているのに対して、大手出版社などでは納得のゆくビジネスモデルを確立できず、本格的な参入に躊躇していること。そして、オンラインで書籍を販売するに際して、第三者による審査(つまり検閲)が入る場合もあり、表現が制限される可能性があること。このように、何よりも「自由」であるはずのネット上に存在する無数の利害関係によって、電子書籍はがんじがらめになっているわけです。

しかし思い返してみると、電子書籍などという堅苦しい言葉は最近まで存在しませんでした。他方、その十年以上前から、ネット上に作品を発表する人はいましたし、それを読む人もいたのです。このような人たちの存在が、ブログやツイッター誕生の淵源になったことは間違いないでしょう。

前置きが長くなりましたが、今回拙稿を掲載する運びとなった shishi も、その意味では実にシンプルな媒体です。ウェブサイトのなかにある雑誌。それ以上でもそれ以下でもありません。

ただし、ウェブサイトのなかにある、ということが様々な現象を可能にします。バックナンバーは最新の記事と常に有機的に併置され、それぞれの記事からはいとも簡単に外へと飛び出すことができます。読者は作品にコメントを残すこともできますし、本人さえその気なら、自作を投稿することもできます。「ジャンルと国境をこえる web 雑誌」というコンセプトには、編集部の一方的な思いだけではなく、読者を巻き込んで発展してゆく shishi という場の構造もまた含まれているのではないでしょうか。

shishi という題名にはとくに意味はないそうです。意味のない題名というのは下手をすると奇を衒っているように見えてしまうものですが、この雑誌の場合には、それがうまく働いている気がします。shishi とはなんとも多くの連想を呼ぶ音節ですし、白い誌面と相まって、いたずらに色に染まらない(あるいは何色にでも染まる)雑誌であることが強調されています。